あかつき@おばなのDTP稼業録のあかつきさん が主催する「DTPの勉強会の第1回」が6月26日(土)に東京目黒・大橋会館にて開催されました。そのレポートをしてみたいと思います。
詳細は以下に。
以下、公式サイトからの引用です。
■ショートセッション
- 「InDesign Glee のバージョン判別方法」
丸山さん(ものかの)- 「アナログ経験者のデジタルの使い方」
宮地(えむ)さん(大阪DTPの勉強部屋)- 「ネタとしてのアナログ的手法への回帰」
logicsystemさん■メインセッション
「出力・印刷の現場 ─データを受け取った現場で起こっていること─」
スピーカー:村上良日(やも)さん・坂口礼治さん((株)ケーエスアイ)
[内容]
- 時間を読める工程とそうでない工程
- 工程を組むために必要な情報とは
- 本当によくあるデータ内容
- 本当にPDFでよかったのか
という内容で行われました。
ショートセッション1.
「InDesign Glee のバージョン判別方法」
丸山さん(ものかの)
トップバッターは「ものかの」の丸山さんでした。丸山さんが開発されたInDesignユーティリティ「InDesignGlee」の開発経緯と、実際に行われている「バージョン判別方法」の解説をしていました。
DTP関連の勉強会やセミナーで、こういった裏側の話を聞けるのは非常に貴重なことなので勉強になりました。ありがとうございます(^^)
ちなみにInDesignGleeは、InDesignデータを最後に保存されたバージョンで開けるというとても便利なユーティリティです。お試しアレ!
(InDesign Glee Help)
ショートセッション2.
「アナログ経験者のデジタルの使い方」
宮地(えむ)さん(大阪DTPの勉強部屋)
2番手は宮地(えむ)さん。(大阪DTPの勉強部屋)の登場。お噂はかねがね聞いていたのですが、セッションを聞くのはこれが初めてです。アナログ時代の印画紙の切り貼り、カラス口などの作業工程の動画をバックに流しつつ、作業風景の解説や仕事の心構えのお話をされていました。DTPで使うアプリケーションのスキルだけでなく、仕事の完成品に対する工程を組み立てるスキルが大事とも。お話の間に、えむさんが作成されていたと思われる当時の作品を見せて頂きました。職人堅気なその完成品を見て、しばしうっとりしていたことは内緒です(笑)
アナログ作業を長年やってきた感覚や思考、講演の中でお話されていた「仕事の完成品に対する工程を組み立てるスキル」は、デジタルな作業に置き換わってもとても大事なことだと思います。
今からアナログな作業を身につけることはしなくてもいいかもしれません。でも、自分でやったことのない経験をしてみたり、自分の今ある環境の中で「何ならできるのか?」という、周りを変えようとするのではなく、自分の行動から世界を変えていこうというぐらいの気持ちを持って何かに取り組んでみる。そういったことを、えむさんの講演を聞きながら、改めて感じた講演内容でした。ありがとうございます(^^)
メインセッション
「出力・印刷の現場 ─データを受け取った現場で起こっていること─」
スピーカー:村上良日(やも)さん・坂口礼治さん(株式会社ケーエスアイ)
そして本日のメインセッションです。印刷現場の方のお話は、本当に聞きたかった話でした。
お話をしていただいてくれたのは村上さん(やも)さんと坂口さん(れれれの)のお二方でした。巧妙に演出された掛け合い漫才のようなセッションは、とても楽しめました(^^)
あまりにも内容が濃い&情報量が多かったので(笑)、自分なりにまとめてみました。なお、m_nonさんの所で詳しいレポートをされているので、そちらをご参照下さい(^^)
(印刷事故を無くすコミュニケーションの重要性—DTPの勉強会第1回レビュー – 名前はまだ無い。)
- 出力業務で大切なことは、指定通りの印刷ができること
- 印刷会社のスケジュールには、紙やインキの発注、印刷機のスケジュールなど、さまざまな要因が絡んでいる
- 入稿時のトラブル
InDesign:パッケージされていない、リンク画像が更新されていない、ノンブルが手打ち、全ページテキストリンク
※特にIllustratorユーザーからInDesignユーザーにスイッチした人に多いとか
Illustrator:アートボード外に余計なデータを置いている 、埋め込み画像が抜け落ちている、白色指定のオーバープリント指定
全般:裁ち落としなのか分からない微妙なイチに配置しているオブジェクト(タチから0.56mmとか…) - 拡大率が極端に少ない数値でのリンク(一桁台とか)
- 特色インキや印刷機の動画などを再生。YouTubeなどでもそういった動画が配布されている
- 「eps形式で入稿すれば大丈夫」という神話の危険性
完全データが各印刷会社のハウスルールが違うので、その問題を回避するために「アウトライン化/eps形式保存」が広まった - データの入稿形態の変化(MOからCD-R、ファイルサーバなど)
関係者以外の人に、ファイルサーバのアクセスできるIDやパスワードを教えていませんか? - Illustratorでのページモノの入稿事例
InDesignやQuarkXPressに面付けしないで、Illustrator/eps形式データのみでの膨大なファイルの量が画面に… - InDesignデータで「全てをアウトライン化しての入稿」といった事例
- PDF入稿の事例(PDFデータのメリット、デメリット)
- 「完全入稿」を目指そう
完全データを完全入稿するためのガイドラインを作り、早い段階で多くの人に見てもらえる仕組み、フォーマットが大事 - PDFの作成方法には、アプリケーションの書き出しからとDistillerからの書き出しがある
- DTPの情報が欲しい時は「吉田印刷所」で調べてみよう!情報も豊富!
- 印刷までの工程やガイドラインも大事だけど、一番重要なのは「印刷に関わる、全ての人達とのコミュニケーション」
- 業界内での「リッチブラック(真っ黒)」な話
こういった流れでお話が進みました。いやはや、本当にここまでまとめて頂いて、お話をしてくれたことに感謝します(^^)
メインセッションを聞いてみて感じたこと
メインセッションを聞いてみて、分かっていたつもりだけどできてなかったことや、全く知らなかったこともありました。制作サイド側の人間としての立場からお話させていただくと、私のようなフリーランスの人間だけでなく、デザイン事務所、デザイン会社で雑誌などのエディトリアル業務をされている方達のほとんどは、編集部を通してのやりとりが前提ということもありますが、印刷会社(印刷現場)サイドからのお話を聞く機会がほとんどありません。
特にフリーランスの人間にとって、デザイン&レイアウトデータの作り方が独学でやっている人の方が多いと思います。なので、トンデモデータ(とんでもないデータ)を知らぬ間に作っていることもあって、印刷所の方ががんばって印刷できるように修正していただいたりしていることも多いと思います。
メインセッションのお二人がおっしゃっていた、制作サイド、印刷現場、お互いにとって大事なのは「どうやったらちゃんとしたデータを作れるか」という情報交換やコミュニケーション、そして危機管理。まさしくその通りだと思います。現在進行中の案件で、直接デザイナーや印刷現場の方との話はできなくても、他のデザイナーや印刷現場の方との交流や意見交換は、自分がアクションを起こせばできるものも多いです。
今回の「DTPの勉強会」のようなイベント、DTP情報の開示に積極的なWebサイト、個人ブログなどの情報発信型のメディア、TwitterやmixiなどのSNSなど、有志の方々が積極的に動いています。特に勉強会やセミナーなどは、現場の「生」の声が聞けますし、懇親会などで新しい交流も生まれ、新しい発見が常に見つかると思います。なので、ちょっとお時間を割いて頂いて、自分の仕事で分からないことや、情報を提供できる場所に出てみませんか?制作側、印刷側にとっても、その意見は「有益」な情報になると思いますので(^^) もしこういった勉強会やセミナーに「参加しづらい…」という方は、私に一声お掛け下さい。時間があれば喜んでお付き合いします(笑)
ショートセッション3.
「ネタとしてのアナログ的手法への回帰」
logicsystemさん
諸事情から、最後のセッションになった「ネタとしてのアナログ的手法への回帰」という内容でしたが、ネタのような、本気のような、絶妙なラインでの軽快なトークで最後を締めて頂きました(笑)
DTP黎明期からのデータを、どの環境からでも管理・閲覧をするのには全く新しいアプローチ「全画像化」 という提案内容でした。そして、なにかしら修正などがあれば、最新版のPhotoshopで修正!という単純明快なフロー!
最後の最後にこの内容で、この順番で勉強会を締めていただいたことは、まさしく奇蹟!とてもいい余韻を残して頂きまして、ありがとうございます(^^)
最後に今回のメインセッションの内容ですが、7月に再度行われます!(Design × Lifehack × CrossOver Lab – 【告知】DTPの勉強会の第1.2回が7月24日(土)に開催されます。#dtpstudy)
今回の話を聞いた方が、復習の意味も込めて聞くのもよし。「自分が何かできることってないかな?」「おお、ちょっと興味あり!」という方もぜひ、参加してみてはいかがでしょうか?
興味のある方は下記リンク先からどうぞ!
あかつき@おばなのDTP稼業録 【DTPの勉強会 第1.2回】開催のお知らせ
ここからは勉強会で感じた、個人的な意見です(^^) 興味のある方はどうぞ。
【ものかのさんのセッションを聞いて】
昔からDTPの現場では、ユーティリティや便利なアプリは色々ありましたが、実際にはどんな風に制作されているのか?ということを見ることはありませんでした。
私がQuarkXPress3.3を使っていた頃に、そういったユーティリティを作っていた方とお会いする機会がありまして、そういったユーティリティなどのプログラムを書いている方は、自分の作業効率化に繋がる理由ということと、このアプリをつかって、誰かが日常の業務を少しでも役になってもらおうという「愛」から、アプリケーションを開発されるモチベーションとして制作されている方がとても多いので…ものすごく感動しました。思いを形にする方法は色々あることを改めて知り、そしてそういった気持ちを形にする方に、本当に感謝しています(^^)
誰かの幸せの為に「愛」を持って何かを生み出す行為。本当に美しいことだし、尊敬します(^^) 今後も、すばらしいアプリが生み出されること、期待しています!ちなみに丸山さんから、マスコットキャラクターの「たまさん」グッズをプレゼントしていただきました!ありがとうございます(^^)
【えむさんのセッションを聞いて】
昔話になりますが、私がデザイン事務所に入った時には製版・級数指定をしての雑誌レイアウトを2年ほどやっていました。当時はMacは事務所にありましたが、ほとんど仕事では使っていませんでした。逆にそれがよかったと今でも思っています。印刷物として完成するまでは、自分の頭で明確にイメージをしておくことが前提の製版・級数指定をしながらのレイアウトは、想像力も強化されますし、完成品がイメージされているので、なにかトラブルが起こったときに焦らず冷静に対処できます。全てが想像通り、予定通りな完成品になることはありませんが、最低限ここまではできるという考え方、方法といった「型」は十分身に付くと思います。
今では製版・級数指定をしながらといった業務はやっていませんが、簡単なラフを書いて、自分が向かいたい方向はどっちか?だけでも考えてから仕事に打ち込むことで、新しい発見があると思います。今日からでもぜひ、PCで作業をする前にラフを書いてみたり、1分でもいいので取りかかる仕事の「完成型」を想像することをしてみてください。きっと新しい気付きが生まれると思いますよ(^^)
以前からなんとなく思っていたんですが…関西方面の方のセッションに共通しているのは、やはりサービス精神が旺盛なこと。自分のプレゼンや講演の中にネタを仕込むということが普通って、やっぱりすごいと思います。
今年は名古屋、大阪方面に、仕事以外でもお話を聞きたい方や、会いたい方がとても多くなってきたので、ぜひぜひ遠征したいところです!
【メインセッションを聞いて】
通常の勉強会やセミナーにて、スピーカーの方々からの問題定義や、熱いディスカッションも大事だとは思います。その中に、お二方の漫談…というか掛け合い漫才(笑)といった、エンターテイメント性を付加させることで、ぐいぐい引き込む感じの話の持って行き方をして頂くと、「話の難しさ」というノイズを取り払い「話の本質」に飛び込めるという安心感が出てきます。そういった意味でもとても勉強になりました(^^)
【あまおかさんのセッションを聞いて】
「画像化」…この方法って、ある意味アリなんだと思います。いつでも印刷できる状態のデータや、pdfのようにアプリケーションによっては完全なレイアウト状態を保って作成できないデータもあるんだと思います。
であれば、低解像度でも動画が見られるYouTubeがいい例で、印刷できなくても、とりあえず見られる画像が欲しいという方はいると思うんですね。そういった方用に保存をしておくのもアリかな?とか。
今後、技術が発展して、多少ネムい画像、低解像度の画像を拡大してもキレイに見える補間技術とOCR認識が格段によくなって、作成したレイアウトがそのままInDesignデータになるといったことができるかもしれません。 印刷が無理でもiPadのようなデバイスであれば、 特に問題ないかなと思ってみたり。
【関連サイト】
あかつき@おばなのDTP稼業録 【DTPの勉強会 第1回】開催のお知らせ
以下、各関係者のTwitterアカウントです。
@akatsuki_pocket (主催者あかつきさん)
@monokano (ものかのさん)
えむ (@workstationm) on Twitter(えむさん)
@logicsystem(logicsystemさん)
@yamo74 (やもさん)
@rerereno (れれれのさん)
@jdash2000(笹川さん@吉田印刷所の中の人)


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